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入間市博物館 アリット

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博物館建設基本計画

更新日:2020年10月22日

平成2年6月29日

入間市長 水村仁平 様

入間市郷土博物館等建設審議会
会長 繁田正一

入間市郷土博物館等建設基本計画について(答申)

先に諮問を受けた標記の件について、慎重に審議・検討を行った結果、ここに別紙の通り答申いたします。

本答申にあたって

当審議会は、昭和63年5月に市長より、郷土博物館の建設に関する主要な事項について諮問を受けました。

当市は、「香り豊かな緑の文化都市」の建設を目指して、さまざまな施策を実施し、市民生活のより一層の向上を図ってきています。

この郷土博物館の建設も市民の郷土に対する理解と愛着を深めつつ、市民文化の発展に貢献するものとして、重要な施策であると考えます。

このため当審議会では、昭和63年の第1回会議から平成2年3月の第8回会議まで、延べ12回にわたる会議と2回の視察を行い、審議・検討を重ね、昭和63年度においては郷土博物館建設の基本構想を審議して、第5回会議において成案を取りまとめました。

また、郷土博物館建設の具体的な第一歩として、建設場所について市内6ヶ所の候補地を視察し、平成元年度第3回会議において決定し、第1次答申として入間市長に対し答申をいたしました。

これに引き続き、博物館の建設に関わる基本計画について検討するため、第4回会議からは3分科会に分かれてそれぞれの課題を検討し、成案の一部を中間答申いたしました。

さらに、当審議会では平成2年度第1回会議から第3回会議で、「基本テーマ」、「運営基本計画の基本理念」、「管理運営基本計画」、「将来に向けて」の4つの項目について審議を重ね、ここに本答申するものであります。

入間市郷土博物館が、市民にとって「心のよりどころ」となるよう、答申に基づいて立派に建設されることを熱望いたします。

入間市郷土博物館建設基本計画

基本構想

基本テーマ

運営基本計画

  1. 基本理念
  2. 資料収集保管計
    1. 収集の対象
    2. 収集の範囲
    3. 収集の方法
    4. 資料の整理
    5. 資料の保管
  3. 展示計画
    1. 展示計画の基本的な考え方
    2. 展示方法 展示構想と概要
      • 常設展示
      • 企画展示
      • 屋外展示
      • 創作活動展示
      • 出前展示
      • 収蔵展示
  4. 調査研究活動計画
    1. 入間市の自然科学・人文科学・芸能・産業・美術工芸・芸術等に関する調査研究
    2. 博物館が収集する資料についての事前調査
    3. 博物館収蔵資料の整理分類と調査研究
    4. 博物館収蔵資料の取り扱いに関する調査研究
    5. 映像資料の企画・編集に関する調査研究
    6. 市民参加による調査及び民間委託調査に関すること
  5. 教育普及活動計画
    1. 展示活動を通しての教育普及活動
    2. 映像による教育普及活動
    3. 講座・講演・講習会等
    4. 資料の紹介・閲覧・貸し出し
    5. 学校教育との連携
    6. 出版活動
    7. 広報活動
    8. 体験学習
  6. 総合文化活動計画

建物基本計画

  1. 博物館敷地全体の利用計画
  2. 建物計画について
  3. 館庭内施設の概要
  4. 博物館各室の概要

管理運営基本計画

  1. 組織および
  2. 職員構成
  3. 運営

将来に向けて

  1. 民間活力の導入
  2. 将来の付属関連施設について
  3. 交通手段の確保について

入間市郷土博物館建設基本構想

目的

入間市は豊かな自然と誇るべき数々の文化遺産が存在しており、これらの資料を総合的に取り扱い、新たな時代へと継承して行く施設が必要となってきた。

また生涯学習時代を迎え、みのり豊かな市民生活と、より一層の文化芸術活動の向上が図られている。

そこで何よりも市民が自分たちの住むまちの自然・歴史・民俗・産業・美術工芸等を理解し、郷土愛を深めることによって、市民の「心のよりどころ」となり得るような施設づくりを目的として、(仮称)入間市郷土博物館を建設する。

性格

  1. 博物館法に則り、市の自然・歴史・民俗・産業・美術工芸等を扱う総合博物館とする
    市の歴史・文化・産業は、豊かな自然環境を母胎として育まれ、今日まで伝えられたものと言える。今日の市民生活もまた同様である。入間市郷土博物館は、市民にとってかかわりの深い自然環境を基本に考え、それを多角的な側面から分析し、展示テーマとして扱う。また、体験を通して学習できるように配慮する。
  2. <市民の生涯学習の場>を充分考慮した社会教育機関とする
    博物館は法の定により社会教育機関とされている。博物館の基本的機能として、
    1.博物館資料の収集保管
    2.博物館資料の調査研究
    3.資料展示
    4.教育普及
    の4大機能があるが、入間市郷土博物館は、<市民の生涯学習の場>に対応できるよう、体験学習や博物館資料の情報提供等の教育普及活動を図り、市民が気軽に利用し、自主的な学習活動を充分に行える施設とする。
  3. 市民参加の博物館運営
    博物館が社会教育機関として充分な機能を発揮するためには、「市民参加」が不可欠である。そのためには、博物館施設を市民に提供し、市民自らの企画による展示会・講演会等を開催するなど、気軽に利用できる制度を整える必要がある。また、博物館運営の基盤となる啓蒙普及活動を充実させ、市民の理解と協力を得るために、博物館フレンドのような組織づくりも必要と思われる。
  4. 博物館ネットワーク化に対応できる体制
    博物館は将来、ネットワーク化の時代を迎えようとしている。高度情報化が一層進む中で、市民の情報に対する要求はより広範囲にわたることが予想される。博物館は単に自館の資料に関する情報だけでなく、近隣市町村はもとより県外にいたるまで、広域的な情報の提供が求められよう。これに対応するためには、博物館相互のネットワーク化が必要であると思われる。また既存の教育機関(学校教育機関・社会教育機関)や文化施設とのネットワーク化によって有益で有機的な公共施設の利用が図られると思われる。
  5. 複合的機能の充実
    生涯学習時代の今、博物館が社会教育機関として果たす役割は増大し、また市民の多様な文化芸術活動の舞台としても博物館の置かれた位置は重要である。この状況に対応するため、博物館に美術館的機能と文書館的機能を複合させることによって、博物館の機能を充実させる。美術館的機能とは、文化財としての美術工芸品の展示以外に、市民の現代美術作品等を展示できる市民ギャラリーとしての利用が考えられる。また文書館的機能とは、歴史的・学術的価値の高い行政文書を精選して、歴史資料として扱い、市民が閲覧・検索できる体制を整え、情報提供サービスが行えるようにする。

基本テーマ

『香り豊かな自然と文化』
いにしえと語り、そして未来

私たちは、過去から営々と築かれた文化を共有の財産として今日に受け継ぎ、それを基盤として新たな創造活動を展開している。

この創造活動もやがては現代の文化として、時代の人々へ伝えられていくものである。

そして私たちの創造活動は、いつの時代においても常に自然環境を母胎とした生活基盤によって支えられている。

入間市は武蔵野の面影を残す自然の豊かな街といわれ、市内の丘陵地帯を中心に貴重な動植物の生息が確認されているが、その一方では首都圏のベッドタウン都市で急速な都市化が進行しており、私たちの生活基盤も大きく変化している。

入間市では快適な街づくりのため、『香り豊かな緑の文化都市』という将来像を策定し、その実現に向けて、その生活基盤となる自然環境を保全しつつ、都市機能の整備を図っている。

私たちの自由な創造活動もまた『香り豊かな緑の文化都市』実現の大きな要因となるものである。

入間市郷土博物館は街づくりという視点にたち、博物館の機能を十分に発揮して情報の提供や活動の場を提供し、地域社会の核となることが使命である。

そのために入間市郷土博物館は、市民の生活基盤である自然環境と、市民の創造活動によって形成される文化との関係を常に考え、過去から現在、そして未来へと受け継がれる普遍のテーマとして、『香り豊かな自然と文化』-いにしえと語り、そして未来-を基本テーマとして決定する。

運営基本計画

1.基本理念
市民の「心のよりどころ」となる博物館運営

入間市郷土博物館は、市民の「心のよりどころ」となる博物館運営を目指し、同時に地域の情報センターとしての機能を発揮できるような体制を整える。

博物館を運営する上で、市民の積極的な参加をうながしていくためには、博物館が総合文化活動や生涯学習を実践する場となり、それを気軽に利用できる環境を整える。

展示については、来館者の感性に訴え、心に残る、より積極的な展示を目指していく。

また、教育普及活動において、それをより深く理解してもらうためには、体験学習の効果は大きく、積極的に行っていかねばならない。

さらに、学校教育との連携を重視し、博物館と学校が郷土学習をより効果的に実施できるような協力体制を確立して行く。

そして、「感動と理解、発見と探求の場」としての博物館を運営して行くことが大切である。

また、これからの博物館に求められるものは、時間の流れと空間の広がりを持ち、それを有機的に展示に生かしていくことである。

そのためには、過去・現在・未来を繋げる展示を目指し、かつ、「世界の中の入間」を意識した博物館運営を目指していく。

また、博物館館庭を来館者が1日中楽しく遊べるような空間にする必要がある。

そのためには、武蔵野の自然をふんだんに取り入れた館庭とし、市民が気軽に立ちよれる空間としなければならない。

また、博物館が市民文化の核となるためには、地域の情報センターとしての機能を持つことが必要となり、そのためにデータバンク体制を確立し、市内教育機関、文化施設、家庭を結ぶ情報ネットワークをつくり、また、近隣の博物館とのネットワークづくりも推進していく必要がある。

さらに、文書館的機能と、美術館的機能をもあわせもった総合博物館として、市民のさまざまな要求に応えていくことが大切である。

2.資料収集保管計

資料収集保管計画は、博物館活動における基本的要件であり、展示活動や教育普及活動の内容に大きく影響する。

また、資料の収集と保管は博物館建設の準備段階から一貫して行われるべきであって、実施に当たっては市民の理解と協力を得なければ円滑な活動は困難であり、その体制を確立する必要がある。

具体的に計画を立案するに当たっては、収集する資料の対象(何を)、収集対象地域の範囲(どこから)、収集の方法(どのように)、収蔵資料の整理(どう)資料の保管(どこに)という基本的な事項について検討しなければならない。

  1. 収集の対象
    基本構想を踏まえ、自然科学・人文科学・芸能・産業・美術工芸・芸術等の諸分野において入間市と関係の深い資料を収集の対象とし、必要に応じては直接入間市と関係のないものであっても収集の対象に含め、総合博物館にふさわしい内容の充実を図る。
  2. 収集の範囲
    資料の収集範囲として、入間市域がその中心的な対象になるが、「収集の対象」との関連において入間市以外の地域も必要に応じて収集の範囲に含める。
  3. 収集の方法
    資料の収集にあたっては、市民の協力を得て計画的に行う必要がある。資料は購入・寄贈・寄託・借用・交換等によって収集し、また展示方法等によっては模型・複製品を作成するほか、ビデオソフト等の映像資料も積極的に制作し、その活用を図る。
  4. 資料の整理
    収集した資料については、資料整理台帳等を整備して記録保存するとともに、保管状態を常に把握しておく必要がある。また資料に関する調査研究を行い、データーの蓄積を行うとともに、コンピュータ等の機器を導入して、検索や情報提供など、市民の利用に供するよう配慮する。
  5. 資料の保管
    収集した資料については、その保管管理が重要である。実物資料については、クリーニング・燻蒸・修復等を行い展示できる状態で保管するとともに、模型や映像資料についても劣化を防ぐ条件の下に保管し、定期的に点検する。また、資料の増加に備えて収蔵場所等の受け入れ体制を整備する。

3.展示計画

  1. 展示計画の基本的な考え方
    現在、日本では物質的な充足を得て、精神的、知的なものを日常生活で大切にし、また、自分なりの生き方を求める個性化の時代となり、市民ニーズの多様化が進んでいる。その一方、郷土への愛着や市民相互の連帯も求められている。博物館における展示は、博物館において調査研究した成果を、資料を用いて表現し、広く市民の利用に供し、感動と理解・発見と探求の場をつくるものである。そして文化や文化遺産を次の世代へ伝えるとともに、これをさらに発展させ新しい文化を創造していく。また、「ひと」と「もの」との結びつき、さらに「ひと」と「ひと」との結びつきを通して、心の豊かな、うるおいのある生活をつくるものである。このためには、次に掲げる展示を目指していかなければならない。旧来の博物館で行われているような、単に目で見せるだけでなく、五感で感じさせ、明るく、新鮮で、面白いことに出会えるという期待感を持たせる。そして誰もが気軽に入れ、親しみを持ち、何回でも見たくなるような配慮を行う。また、郷土色を感じさせることによって「心のよりどころ」を形成するとともに、さらに郷土の枠にとらわれることなく、広い視野に立った展示を行うことにより、多様なもの、奥深いものを目の前に広げる。そして先人たちの優れた財産を単に過去の遺産として見せるだけでなく、現在から未来に繋げる展示を行う。さらに市民の生涯学習活動に寄与し、また学校教育と連携をとり、協力し、援助する展示を行う。このような考え方に従い、基本テーマを柱に、自然、歴史、民俗、産業、美術工芸等を総合的に展示する。展示方法は常設展示、企画展示、屋外展示、創作活動展示、出前展示、収蔵展示によって行う。
  2. 展示方法-展示構想と概要-
    (常設展示)
    基本テーマに基づいて資料収集し、調査研究された成果を基礎として、自然、歴史、民俗、産業、美術工芸等の入間市にかかわる様々な事象を総合的に扱うが、この中でも自然、歴史、人物、茶に重点をおく。常設展示は博物館の顔となるもので、年間を通じて展示を行い、市民がいつでも利用できるものとする。「自然」は、室内展示とともに屋外展示によって雑木林、水鳥の池、水辺の植物園、植物園等、自然を生かした展示を行う。これによって自然をより身近なもの、親しみのあるものにする。「歴史」は、単なる通史に終わらず個々のテーマを設定し、時代の変革に焦点をあてて入間市の特色を浮き出させる。そして過去から現在にいたる入間市像をあらわにし、さらに未来への歴史像を表現する。「人物」は、郷土の政治、文化、産業、教育等に足跡を残し、郷土「入間市」を支え、つくってきた偉人たちの姿を紹介する。そしてこの人々の活躍を通して、日本の中の入間市、世界の中の入間市の位置づけをも表現する。「茶」は、入間市の顔である狭山茶の歴史や製造具の変遷、茶の文化を通して入間市の文化を表現する。さらにこれだけにとどめず、日本茶と世界各地の茶との関係や茶にかかわる様々な文化を紹介し、世界と入間市の繋がり、日本と入間市の繋がりを表現する。また茶畑、茶工場において茶づくりを体験し、茶室と有機的に結ぶことによって茶の文化をも体験する。
    (企画展示)
    常設展を更に深めるためにテーマを設けて展示する。さらに日常、市民が目にすることのできない国宝、重要文化財およびこれに類する資料を市内のみならず、国や県から借用するとともに、世界的な美術品をも借用するなど、市民の要望を積極的に取り入れた展示を行う。また、市内に埋もれている資料や美術品を積極的に掘り起こして、展示を行う。
    (屋外展示)
    旧黒須銀行、古民家、縄文時代復元住居によって当時の生活等の体験を行い、また、茶室、登窯復元展示場、彫刻の森等によって文化、芸術に親しみ、水鳥の池、観察小屋、水辺の植物園、植物園、雑木林展示ゾーンによって自然に触れる。また、体験広場では伝承や自然の原理等を五感で感じさせる。このように、屋内では展示できないもの、あるいは屋外で展示することがより一層効果的なものを展示する。
    (創作活動展示)
    文化を見る、学ぶだけでなく、市民の美術工芸、芸術等(陶芸、彫塑、絵画、書道、写真、文芸、土器づくり等)の創作活動を通して、市民自ら新しい郷土文化を生み出し、育み、担っていく展示を行う。
    (出前展示)
    資料を博物館内だけにとどめず、条件的に可能なものについては移動展示、巡回展示、貸出展示等を行うことによって積極的に活用し、さらにケーブルテレビ等のマスメディアを用いて博物館情報を各家庭までおくる。このように幅広く市民サービスに努めるとともに、市民生活に密着した活動を行う。
    (収蔵展示)
    当面、常設展示や企画展示で展示する計画のない収蔵資料(民俗資料、古文書、行政文書等)を市民のリクエストにより、可能な範囲で公開し、博物館資料をより市民に身近なものにし活用を図る。

4.調査研究活動計画

調査研究活動は、博物館の持つ重要な機能である。その対象は資料収集保管計画に基づいて収集された資料をはじめ広範囲に及ぶ。

また調査研究活動の方法も、博物館自身で行うもの・市民が主体的に行うもの・博物館と市民が協力して行うもの・専門機関に調査を委託するものなど多様である。調査研究活動の内容は概ね以下のように分類できる。

  1. 入間市の自然科学・人文科学・芸能・産業・美術工芸・芸術等に関する調査研究
    入間市に直接的または間接的関連する事項全般について調査研究するもので、広範囲な分野を対象とする。
  2. 博物館が収集する資料についての事前調査
    博物館に資料を収集するにあたり、事前に資料の所在地・内容または状態・価格・さらに収集する資料として適当か否かの判断等を調査する必要があり、この結果を基に計画的な収集活動を行う。
  3. 博物館収蔵資料の整理分類と調査研究
    収蔵資料の整理分類は調査研究の前提であり、収蔵資料に関する情報を台帳等に記録し、保管状態を把握するとともに、目的に応じた調査研究が行えるような体制を整える必要がある。収蔵資料の調査研究は展示活動及び教育普及活動に直接関係するもので、重要な活動である。調査研究の成果は、展示のほか出版物や映像資料の制作、検索等によって市民の利用に供する。
  4. 博物館収蔵資料の取り扱いに関する調査研究
    収蔵資料の取り扱いや化学的な保存方法を調査研究することも重要な課題である。特に温度・湿度・光量・防虫に対する基本的な知識と専門的な対処方法を調査研究することは、資料の保存管理上重要な事である。
  5. 映像資料の企画・編集に関する調査研究
    映像資料は、資料に関する情報を様々な映像技法によって、具体的かつ印象的に提示し、さらに現実的には不可能な状態を疑似体験できるなど、これからの博物館においては重要な資料となる。映像資料の制作においては、企画・編集が重要な作業であり、このために視聴覚教育や映像効果に関する調査研究を進め、教育普及活動に有効に活用できるように配慮する。
  6. 市民参加による調査及び民間委託調査に関すること
    博物館の行う調査は、市民の協力が不可欠であり、その内容によっては市民に調査を委託して実施したほうが有効であり、市民参加の博物館運営をめざすうえでも重要である。また、博物館では扱えない事項については、専門の調査機関に調査を依頼し、その成果を博物館の調査研究活動に活用する。

5.教育普及活動計画

博物館の教育普及活動は、博物館の存在そのものを意味するものであり、博物館の諸活動は教育普及活動をその最終的な目的とする。

また博物館は地域社会の情報センターであって、博物館自身の教育普及活動はもとより、学校・図書館・公民館・市民会館等のさまざまな教育及び文化施設と連携した有機的な結びつきによって、地域社会の発展に貢献しなければならない。

博物館の教育普及活動は、その目的や方法によって以下のように分類することができる。

  1. 展示活動を通しての教育普及活動
    展示は、利用者が博物館で最初に経験する「教育普及活動の場」である。ここでは主に実物資料を通して、博物館資料に関する情報を提供する。
  2. 映像による教育普及活動
    教育普及活動において映像が与える影響や効果は大きい。博物館内において効果的な映像資料による展示を行うことはもとより、映像資料の貸し出しやケーブルテレビを利用した情報提供など、博物館と家庭を結ぶネットワーク化が今後の教育普及活動においては重要な課題である。
  3. 講座・講演・講習会等
    市民が積極的に博物館の教育普及活動に参加できるよう、広範囲な分野に関する講座や講演、また身近にある文化財の取り扱いに関する講習会等を実施し市民の関心や要望に応えられる場を提供する。
  4. 資料の紹介・閲覧・貸し出し
    資料収集保管計画に基づき、収集された資料は整理分類され、利用者に情報提供できる状態で保管する。また収蔵資料以外のものについては、他の地域にある博物館等との連絡体制を整え、利用者に幅広い資料の紹介を行う。さらに、文書館的機能に対応した閲覧体制を整備するとともに、条件的に可能なものについては貸し出しを行う。
  5. 学校教育との連携
    博物館資料を学校教育における郷土学習などに教材として資料提供するとともに、博物館と学校が郷土学習をより効果的に実施できるような協力体制を整備するなど相互の教育的効果を高める。
  6. 出版活動
    市に関係するさまざまな事柄を資料集として出版し、市民をはじめ他の地域の人々に入間市を紹介する活動を行う。
  7. 広報活動
    博物館の活動や企画展示を始めとする博物館事業の紹介、また調査研究活動の成果を発表するために、館報・各種パンフレット・ポスター・研究紀要等の刊行など、さまざまな広報活動を行う。
  8. 体験学習
    博物館の教育普及活動における体験学習の効果は大きく、単に資料を「見る」ことにとどまらず、五感による体験によって資料の性格や本質を理解することができる。入間市の博物館においては、自然科学の原理原則・入間市の年中行事・民俗芸能・郷土料理や、入間市の伝統的な産業である狭山茶の栽培から製茶までの作業等を行うことによって郷土の歴史・文化・産業等について理解を深め、さらに絵画・陶芸などの創作活動に積極的に参加し体験することによって、「市民の心のよりどころ」としての博物館運営を目指す。

6.総合文化活動

博物館は市民の自主的で積極的な参加を得ることによって、はじめて地域に根ざした活力の有るものとなる。

入間市にはさまざまな伝承文化が、市民の自主的な活動によって先人たちから受け継がれ、各地において保存活動が展開されている。

郷土の伝統芸能・伝統技術・年中行事などは「世代から世代へ」と受け継がれる郷土の遺産であり、博物館も積極的に伝承文化の継承に協力しなければならない。

また市内には歴史や文化の研究・自然観察など共通の目的を持つ市民によって組織されたさまざまな団体が、その活動を通して会員相互の結びつきを深めながら、自らの学習意欲を向上させている。

博物館はこれらの団体を「友の会」として、博物館資料の情報や学習の場を提供するだけでなく、団体相互の交流を促進し、博物館の主体的な活動と市民の自主的な活動を結び付けることによって市民が積極的に博物館を利用できる環境づくりをすることが重要である。

また、彫刻・絵画・陶芸・書道・写真など美術工芸の諸分野において「新しい文化」の創造活動を展開している人々もいる。

これらの創造活動を博物館に取り入れることによって、活動の成果を広く市民に紹介するとともに、市民が「新しい文化」の創造活動に対する関心を深め、自らがその創造活動に参加できるよう、「市民ギャラリー」の運営を通して、市民の活動に貢献できる体制づくりが重要である。

入間市の博物館に求められるものは、博物館が従来から展開してきた博物館の主体的な活動と、これまで述べた市民が自主的に展開してきた文化活動を結び付け、市民とのつながりを深めることによって、市民の総合文化活動の拠点となることである。

そのことによって「市民の心のよりどころ」としての博物館本来の目的が達せられる。

そして他の博物館の例を見ない「入間市らしい博物館」が実現でき、今日的課題である生涯学習の要求に応えるものとなる。

建物基本計画

1.博物館敷地全体の利用計画

博物館施設及び館庭の設計に当たっては、利用上の利便性など機能面の検討を行うことが重要であるが、さらに博物館が市民の「心のよりどころ」として位置づけられるためには、博物館全体の雰囲気が楽しく魅力的なものとなることも考慮されなければならない。

四季折々に市民が家族連れで訪れ、自然・歴史・芸術・文化・科学等の情報を楽しく学び、緑にあふれた森と水辺のある館庭でくつろげるような魅力ある空間として博物館を建設できるならば、「博物館は、暗くてカビ臭く、堅苦しい場所」という一般的な印象は一掃されるであろう。

博物館の施設は、高齢者や障害者の方の利用に十分配慮しながら、来館者の自主的な学習意欲を誘う場となり、また生涯学習の拠点として、情報センター機能が十分に発揮できるような構造と設備を整備する。

その中にあっては展示空間のほか、体験学習室等の児童生徒が郊外学習で十分に活用できる空間を確保する必要がある。

館庭は安らぎの空間であるとともに、屋外学習の場でもある。雑木林や水鳥の池・植物園・森の美術館のほか、古民家や旧黒須銀行等の歴史的建造物、茶畑・茶室・のぼり窯・体験学習広場など楽しみながら学習できるように配慮する。

また入間市のイメージを象徴するようなシンボルタワーを設置し、夢のある空間とすることも必要である。

さらに数多くの来館者が利用できるような、ゆとりのある駐車場・駐輪場も確保する。

2.建物計画について

博物館はその目的に応じた機能として、博物館資料の収集保管機能・博物館資料とそれに関わる事項などの調査研究機能・展示活動や体験学習等の教育普及機能がある。

さらに入間市の博物館においては、他市に例を見ない文書館的機能と美術館的機能を併せもった複合施設として建設する。

市民参加の博物館を目指し、市民の幅広い研究活動や創作活動の拠り所として、また市民の情報センターとして地域社会に貢献することが、博物館に課せられた使命である。

その使命を果たすためには、博物館本来の機能の他、複合機能が有機的に、かつ有効に発揮できる空間と最新技術を導入した設備を充実しなければならない。

また、市民から親しみを持たれ、市民のシンボル的な建築物として、外観等に優れたデザインを取り入れることにも配慮する。

館庭内施設の概要

旧黒須銀行

明治時代の銀行建築として貴重な建築資料であるため、解体修復し移築する。

また外観を眺めるだけでなく、特色を持った内部の活用を図る。

古民家

入間市内の代表的農家建築を解体移築し、当時の生活を再現して体験できるようにする。

縄文時代復元住居

縄文集落としては、日本で有数な坂東山遺跡の集落の一部を復元し、先人の生活・文化に触れる。

茶室

日本の伝統的で格調高い茶室を再現するなかで、茶の湯の文化を学び触れることのできる空間とする。

水鳥の池・観察小屋

水鳥が安心して立ち寄り、その生態を自然な形で観察できる空間とする。

水辺の植物園

水鳥、昆虫等も生息できる環境づくりを考える。

登窯復元展示場

九世紀中頃に武蔵国分寺の七重塔再建の時に使われた、瓦を産出した武蔵国の4大窯跡郡のひとつである東金子の窯跡を復元し、実際に薪を燃やして土器づくりや陶芸活動に寄与する。

植物園

四季折々の花を楽しみながら憩える場とする。

彫刻の森

森の彫刻美術館として、自然の中で芸術を鑑賞する。

体験広場

体験学習室と同じく体験活動を通して、伝承や自然の原理・原則を学ぶ。

茶畑

狭山茶とともに世界の茶の木を展示し、収穫する。

雑木林展示ゾーン観察コース

武蔵野の雑木林を復元し、動植物等の生態を観察する。

せせらぎ・滝

心の安らぎを感じさせる空間とする。

散歩道

各施設を有機的に結ぶとともに、逍遥の空間とする。

東屋

景観に調和し、十分に憩いの持てる空間にする。

駐車場・駐輪場

大型バスの駐車スペースも充分考慮し、ゆとりをもって確保する。

その他トイレ等

個性的な外観を持ち、清潔感を感じさせるものとする。

4.博物館各室の概要

教育普及部門

エントランスホール

来館者に、施設全体の案内情報を適切に提供し、展示への期待を醸成する空間とする。

またトイレ・ロッカーを適宜配置する。また市民ギャラリーを隣接し、市民ギャラリーの機能を補完する。

第1常設展示室

展示との調和を図り、来館者の動線に充分配慮する。また外部景観を取り入れた休憩室を設け、来館者に疲労感を与えないようにする。

第2常設展示室

茶の資料館として、動態展示もできる構造とする。

企画展示室

展示内容により、部屋のサイズを変えられる構造とする。また格調高い空間とする。

展示準備室

常設・企画展示室に隣接し、展示準備のためだけでなく展示室としても利用できるようにする。

体験学習室

伝統技術を学ぶとともに、創作活動に対応して工作や調理ができるようにする。

市民ギャラリー

市民の創作活動の発表の場として、美術館的機能が発揮できるよう、作品展示のための証明や作品の懸垂等を設備し、静的な鑑賞ができる空間とする。

視聴覚室

最新の技術を導入し、データーベースの増加や、市民ニーズの変化、ハードウェアーの改良等に対応できる設備を整える。

資料閲覧室

文書館的機能を発揮できるように、文献収蔵室に接続し、閲覧・検索がスムーズに行えるようにする。

友の会室

会員がいつでも気軽に会合や作業に利用できるよう、設備を整える。また夜間も利用できるよう考慮する。

講座室

講座・講演などを行うため、映写室を設け、視聴覚機材等も整備する。

こども科学室

子供たちに感動や夢を与えるような装置を使って、遊びながら科学の原理を楽しく、やさしく理解することができ、科学をより親しみの持てる空間とする。

研究部門

学芸研究室

学芸員の調査研究活動が円滑に行われるよう整備する。

また調査用機材を収納するスペースも確保する。

文献収蔵室

博物館資料としての古文書、将来にわたっての歴史資料となる行政文書や文献の保存を行う。

また収蔵量の増大に対応するとともに、利用者の利便を考慮し資料の検索・閲覧がスムーズに行えるようにマイクロフィルム・レーザーディスクなどを導入する。

なおコンピューター利用による通信ネットワークに対応できるよう配慮する。

収蔵部門

一般収蔵庫(1)(2)(3)

資料の数量は年とともに増大することを予測し、大きめに作る。

また将来増築することを考慮した設計とする。資料の性質により収蔵庫を3室に分け、空調が必要な室は独立した温度・湿度調整のできる構造とする。

展示室への資料の搬入搬出がスムーズに行えるよう大型エレベーターを近接させる。

特別収蔵庫

借用資料や絵画等の貴重資料を収蔵するため特にアルカリ対策を充分施すとともに、空調にも配慮する。

また盗難火災に充分防備した構造とする。

搬入口・荷解き場

大型車両の出入りができ、荷の積み降ろしがスムーズにできるようにスペースを充分確保し、収蔵庫との接続に考慮する。

また重量物の積み降ろしのためクレーン等を備える。

作業室

資料の修復作業等ができるスペースと設備を整え、和室とスタジオを備えたものとする。

燻蒸室

有毒ガスを使用するため、安全性を特に配慮し設ける。

管理部門

事務室

博物館の管理運営が円滑に行えるように配慮し、来館者の応対がスムーズにできるよう配置する。

会議室

博物館協議会の会議や来訪者の応接ができるスペースを確保する。

印刷室・倉庫

事務室に隣接し適宜設置する。

宿直室

資料の取り扱いもできるように和室とする。

機械室

ランニングコストに配慮をした管理しやすい構造とする。

管理運営基本計画

入間市郷土博物館は、市民がいつでも気軽に利用でき、多くの人々に信頼される博物館運営を目指すものである。

  1. 組織及び職員構成
    来館者に快適なサービスを提供できる組織体制を確保するために、高い見識と判断力を持った館長のもとに、管理係、教育普及係、学芸係の三部門を設置する。また、社会教育機関としての博物館機能を充分に発揮するために、生涯学習や学校教育を援助できるよう、教育普及係に「教育指導主事・社会教育主事・学芸員」、学芸係に「学芸員」など各分野に精通した専門職員を置く。そして、博物館運営のなかに市民の参加を求め、その要望を取り入れていくために、管理運営を審議する機関としての「博物館協議会」を設置する。また、博物館活動を後援していく、利用者による自主的組織である「博物館友の会」も設置していく。
  2. 運営
    博物館運営にあたっては、社会教育機関としての機能を果たすだけでなく、市民文化の拠点となる施設としての機能を発揮できるように、市民の声を充分に反映させていかなければならない。そのためには、市民の利用を最優先させた開館時間や休館日とし、入館料の設定については、社会教育機関としての役割を考慮して決定する。また、博物館の主催する事業は、学術研究に関する専門的分野にとらわれず、市民の要望を反映させた、市民文化の向上に役立つ事業も行っていかなければならない。そして、これらの機能を最大限に発揮していくためには、管理費、人件費、学術研究費、事業費等を十分に確保していくことが重要である。

将来に向けて

これまで市民の「心のよりどころ」となる博物館運営を目指し、基本計画を策定するために審議を重ねてきたが、さらに充実した活動を行っていくには、次に揚げた項目が将来的な課題として残された。

  1. 民間活力の導入
    博物館を地域に根ざしたものとするには、地場産業や地元の企業と連携し協力して行くことが重要な要因である。このような民間活力の導入は、博物館の運営を活力のあるものとするだけでなく、地場産業や地元の企業の振興にも貢献することができる。また家族が博物館で一日中楽しむための空間として、レストランやミュージアムショップが必要であり、民間活力の導入によって入間市として特色のある運営も可能である。さらに将来的には自主財源を確立させる可能性も秘めている。
  2. 将来の付属関連施設について
    博物館の機能を充実させるためには、核となる博物館だけでは限度があり、付属関連施設を設けることが必要である。例としては、考古分野の研究を効率よく進め、生きた資料を市民に提示していくのに効果的な埋蔵文化センター、豊かな自然を利用して、地域社会に密着した館外活動を行っていく自然教育園等が挙げられる。
  3. 交通手段の確保について
    博物館予定地は、市の内外から車でくるには便がよいが、電車やバスを使ってくる利用者にとっては不便である。より多くの利用者が、いつでも博物館にくることができるように便宜を図るためには、直営バスや路線バスの運行等、交通手段の確保が急務である。