博物館の収蔵資料について
更新日:2020年10月30日
入間市博物館では、地域に関する資料、茶に関する資料を12の分野に分けて収集し、その整理・調査研究活動を行い、その成果を様々な形で活用したり、一般の方にご利用いただけるようにしています。
資料分野一覧
文書資料
昭和53年度から始まった入間市史編さん事業を通じて蓄積してきた行政文書・諸家文書・団体文書などの膨大な地域文書群等を中核としたコレクションです。
文書館的機能を有する当館では、資料の検索や利用の便宜をはかるため、文書目録の刊行や、古地図の複製出版、使用頻度の高い貴重資料のマイクロフィルム化や史料の修復事業などを行っています。
こうした成果を活用して地域を探訪する野外講座なども特色ある活動となっています。

中性紙を敷いたダンボール箱に収納された文書

粕谷義三関係資料
粕谷義三関係資料
衆議院議長を務めた入間市出身の政治家粕谷義三(1866~1930)関係の資料。
米国留学中の資料などは19世紀末の在米日本人民権運動家に関する第一級資料として研究者の利用も少なくありません。
金石文資料
昭和53年に始まった入間市史編さん事業の過程で、文化財同好会などの協力を得ながら作成してきた市内の石造遺物、板碑などの拓本や実物の資料群です。
拓本資料のうち特に資料価値が高く、利用頻度の高いものは軸装し、展示等にも活用しています。

拓本の保存

展示された板碑の拓本
考古資料
遺跡発掘調査に伴う出土資料は、基本的に入間市埋蔵文化財調査事務所で保管・管理することになっていますが、展示や講座等に活用するためにその一部を博物館で管理・公開しています。
市内からは特に旧石器時代、縄文時代の遺跡や、古代瓦・須恵器などの製造に関わる資料が多数出土し、特色あるコレクションとなっています。

縄文土器の展示風景
入間市内からは縄文時代早期から後期に分類される型式の土器が出土しています。

東金子窯跡群から出土した瓦
9世紀中頃に焼失した武蔵国分寺七重塔再建のために焼成された瓦。

埼玉県指定有形文化財
円照寺裏中世墓址から出土した蔵骨器と板碑
民俗資料
地域のくらしの営みに用いられてきた「もの」を幅広く収集しています。
特に地域性のよく表れている資料や重要な地場産業であった茶業や養蚕・織物業に関する資料の収集に力を入れています。
収集した資料は使用状況などの情報とあわせて整理、保存を行うよう努めています。
こうした資料は各種の展示や、学校教材などとして公開活用しています。
また、平成19年3月には「狭山茶の生産用具」255点が国の有形民俗文化財として登録されました。

博物館の収蔵庫に保存された民俗資料

「むかしのくらしと道具展」
小学生の郷土学習にあわせて毎年開催しているこの展示会では、さまざまな「くらしの道具」が身近な歴史を語る資料として公開活用されています。

狭山茶の生産用具(一部)
国登録有形民俗文化財
美術工芸資料
「お茶」の文化に関する資料として収集してきた美術工芸品のコレクションです。
なかでも、国内有数の煎茶道具コレクションや煎茶席に関連する書画のほか、お茶が登場する浮世絵コレクションなどに特色があります。
こうした資料群の研究成果に基づいて、江戸後期からさかんとなった「文人煎茶」や、浮世絵を図像学的に解析することで茶の飲用習慣の変遷を掘り下げた展覧会等の開催も行っています。

田能村竹田遺愛の煎茶道具
「文人煎茶」の重要な担い手の一人だった田能村竹田が使用した煎茶道具。
竹田手作りの道具も含まれています。

「館蔵煎茶道具展」
入間市博物館の煎茶道具コレクションの公開活用をはかるため、5回にわたって開催されました。

葛飾北斎画「富嶽三十六景 片倉 茶園之不二」
製茶に関するものや、茶の飲用の様子がうかがえる浮世絵も数多く所蔵しています。
写真資料
地域のようすを記録した貴重な資料として、昭和53年から開始した市史編さん事業に伴う調査の際に収集した写真のほか、市民から寄贈していただいた古写真や、市役所の広報用に撮影してきた写真、空中写真などを収集しています。
また、入間市博物館ボランティア会と協力して行っている市内の定点撮影活動の成果や、各種調査の際の写真等も整理・保存し、様々な形で活用しています。

「町屋通り」
明治40年ごろに撮影された写真。通りの中央には馬車鉄道の軌道が見えます。

古写真とともに展示された定点写真
市内の景観の移り変わりが一目瞭然です。
植物資料
入間市内では、丘陵・台地・河川など変化に富んだ地形と自然環境に対応し、多種類の植物の自生が確認されていますが、開発等の伸展による個体数の減少や、帰化植物の増加などの現象も起こっています。
この分野では、変化していく地域の自然環境の記録として、自生が確認されている植物の分布調査等を行い、押し葉標本の作成を継続的に行っています。
植物調査の成果は、希少植物の自生地保護や種の保存のための移植事業などに活用されています。

植物調査の様子
市内に生育が確認されている希少植物の分布調査。

作成された植物の押し葉標本
平成16年に開催された特別展「入間川再発見!」での展示風景です。
地学資料
平成3年に市内で発見されたアケボノゾウの足跡化石に関連する資料や、野外調査によって収集する地質標本や岩石、市内の公共工事に伴って作成されるボーリング調査の土質標本・報告書などが主な収集資料です。
また、太古の多摩川によって削り取られた河岸段丘の端に立地する入間市博物館は、周囲の地形自体がこの分野の巨大な実物資料ということもできます。

アケボノゾウの足跡化石型取り標本
常設展示室で展示公開されている。

館庭に設置された地形模型
入間市博物館周辺の地形を解説した立体模型。
動物資料
市域に生息する動物を標本化して収蔵しています。
主に教育普及事業などでの活用を念頭におき、生態系に影響を与えないよう、哺乳類・鳥類の死んだ個体、放棄された巣などを収集し、はく製化したものがコレクションの中心です。

動物のはく製資料
映像音響資料
各種調査の際の音声や映像記録、茶や地域に関する映像作品などを資料として収集、保存、活用しています。
映像記録の一部は、映像作品として編集作業を行い、公開活用しています。
茶関係資料
お茶に関するモノと情報の集積地を目指して、茶葉、茶道具、茶を使った商品、茶関係産業資料などを地域の枠にとらわれずに収集しています。
新たな茶の利用法やいれ方の工夫など、お茶をめぐる今日的な話題も「モノ」を通して捉えることができるよう調査・収集活動を行っています。

お茶を使ったさまざまな商品
お茶に含まれるカテキンなどの機能性成分を利用した商品の開発が活発化し始めた頃に収集した資料の一部です。

江戸時代のお茶づくり再現実験のようす
江戸時代の農業指導書に記された方法で茶づくりを行いました。
できた茶は来館者に試飲してもらったほか、資料としても保存されています。
図書資料
当館が取り扱うテーマに関する書籍や茶に関する書籍などを収集しています。
江戸時代の茶書や18世紀のヨーロッパで出版された茶に関する貴重書なども含まれています。
また、埼玉県内外の他市町村の地域史に関連する図書や、さまざまな博物館、美術館等の展示図録等も多数収蔵しています。
図書資料は、保存上の理由などで一般公開に適さないものを除き、資料閲覧室で閲覧利用することができます。

特別展などで公開される図書資料

ヨーロッパで茶の普及を促すのに貢献した書物
J.C.レットサム著『茶の博物誌』1772年出版 The Natural History of the Tea Tree
J.C.Lettsom

特別展などで公開される図書資料