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入間市博物館 アリット

お茶の歴史と伝播

更新日:2020年10月23日

中国西南部の雲南地方をふるさととする茶が砂漠の道や荒波の海を渡って世界各地に伝わりました。

そしてたどり着いた場所の歴史や風土の中で、そこに暮らす人の生活に深く結びつき、さまざまな喫茶習慣が生まれ、今日まで連綿と受け継がれています。

アジアにおける茶の伝播時代

茶の原産地は中国の雲南省あたりと推定されています。

やがて茶という、不思議な効果がある飲み物は、北上して四川省に伝わり、はじめて文献のうえにその姿をあらわしました。

長江の流れに沿って喫茶の風習は四川省から江南地方へひろがり、6世紀ごろには中国全土で知られるようになります。

しかし中国文明のなかで茶の文化が広く認められるようになったのは、8世紀に陸羽が『茶経』を著してからのことです。

およそ7世紀から8世紀にかけて、唐の高度な文明の影響のもとにあった中国周辺の地域(朝鮮半島・日本・アジア)に喫茶の風習が伝播していきました。

『茶経』陸羽著

『茶経』 陸羽著
中国唐の時代(760年頃)に世界で初めて書かれた茶の本。
茶の起源・歴史・製造法・喫茶法・製茶道具・喫茶道具・茶の産地等が体系的に紹介された茶の百科全書ともいうべき書物です。

世界における茶の伝播時代

7世紀・8世紀をアジアにおける茶の伝播時代とするならば、16世紀・17世紀は世界における茶の伝播時代といえるでしょう。

16世紀にはペルシャに喫茶を示す記録があらわれますし、17世紀には、はじめてヨーロッパへ喫茶の風習が伝わります。

その最初は中国から伝わったのではなく、日本からオランダへ伝わった緑茶でした。

オランダからイギリスへ、さらに18世紀にはイギリスから当時のイギリス植民地(アメリカ)へと、茶は世界的な普及を見ることとなったのです。

茶がヨーロッパへ伝わった時代、茶はたいへん高価なもので、一部の人々しか飲むことができませんでした。

しかし、次第に普及が進むにつれて、17世紀の後半ごろから、この新しい飲み物について、医学者たちはその賛否をめぐって盛んに意見を戦わせるようになりました。

茶が人体にたいへん有益であると述べる者がいる一方、茶は健康に悪影響を与えると唱える者もいたのです。

当時のヨーロッパの人々にとって、茶はまだまだ謎に満ちた飲み物であり、その製造法はおろか、原料である「茶」自体も未知の植物であり、好奇の対象ともなっていたのです。

茶の効用を説いた書物『茶の博物誌』J.C.レットサム著1772年刊
“the Natural History of the Tea-tree” J.C.Lettsom(入間市博物館蔵)

茶の効用を説いた書物 『茶の博物誌』
植物としての茶や、茶の歴史、種類などについて幅広く扱ったもの。レットサムは、本書で茶の有用性を説いています。
本書は、初版の出版後間もなくドイツ語やフランス語に翻訳され、ヨーロッパにおける喫茶の本格的普及にも大きく貢献しました。

中国からヨーロッパへ輸出される茶

中国からヨーロッパへ輸出される茶
19世紀に描かれた絵画です。対外貿易の窓口となっていた中国商人の倉庫の様子。
中央に取引を交わす西洋人と中国人の姿が見えます。
(入間市博物館蔵)