狭山茶産地の風土と特徴
更新日:2020年10月23日
狭山茶の特徴
狭山茶は、埼玉県南西部の入間市・所沢市・狭山市をはじめとした入間郡内を主産地とする煎茶です。
この狭山茶の産地の中で最も生産量が多いのが入間市です。
もともとチャの木は温暖な場所に生育する樹木で、寒さは苦手です。
このため、狭山茶産地は、国内の大規模な茶産地としては北限に位置しています。
そこで、品種改良をして寒さに強いチャの木をつくったり、寒い土地でとれるチャの葉を生かした茶作りの工夫が長年続けられてきました。
地元では「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でトドメさす」といわれ、茶の形状よりも味を重視した茶づくりを行ってきました。
仕上げの工程で行われる「狭山火入れ(さやまびいれ)」による独特の香ばしさや、厳しい気象条件のもとで育つ肉厚の葉を用いることによる、甘く濃厚で、コクのある味に特徴があります。
また、茶業の形態としては、農家が自ら栽培したチャを製茶し、販売までを一貫して行う「自園・自製・自販」形態が主流となっているのが特徴となっています。
入間市内の茶畑
武蔵野台地(むさしのだいち)北西部の金子台に広がる茶園。
大規模な茶園としては国内最北限にあたります。
広大な平地に林立する「防霜(ぼうそう)ファン」(霜の被害を防ぐために設置された扇風機)の姿が特徴的です。
狭山茶独特の仕上げ乾燥法「狭山火入れ」(さやまびいれ)
高温で「火入れ」することで独特の強い「火入れ香」が出ます。
また、茶の外観は白っぽく、水色は澄んだ黄金色となります。
全ての工程には90分ほどかかります。
狭山茶の育つ風土-上湿下乾(じょうしつかかん)-
狭山茶は、主に「武蔵野台地」で栽培されています。
武蔵野台地は、大昔に川によって流されて来た砂や石ころの層の上に、富士山などから飛んで来た火山灰が厚く降り積もってできたものです。
火山灰が積もってできた赤土の層(関東ローム層)や、その下の砂や石ころの層は、水はけがよく、雨水は地下にしみこんでしまいます。
このため、この台地は水田には適さず、古くから農業の中心は畑作でした。
そして、チャの栽培にとっては、この水はけの良い土地が好都合なのです。
また、チャの木は雨の多い土地を好むため、年間降水量1300ミリ以上の場所が栽培の中心地となっていますが、入間市の年間降水量は約1500ミリと、これをかなり上回っています。
このように、チャの木の栽培に適した雨が多く、水はけの良い土地の条件を「上湿下乾」といい、入間市はまさにその条件にぴったりの場所なのです。
イラスト製作:中央宣伝企画株式会社