植物としてのチャ
更新日:2020年10月26日
茶の木はどこから来たか
茶の木はツバキ科ツバキ(カメリア)属の植物で、学名をCamellia sinensis(カメリア シネンシス)といいます。学名のうち属名の「Camellia」は「ツバキ属」を表し、種名の「sinensis」は「中国の」を意味します。
和名は「チャ」と書きます。
チャやツバキのように、葉に厚みがあり、表面がテカテカしていて、冬でもいっせいに葉が落ちない樹木を「照葉樹」といいます。
この照葉樹の樹林帯は、インド北部から東南アジア北部、中国南部を通って日本の関東地方まで広がっています。
日本の照葉樹林には、チャと同じカメリア属のヤブツバキやサザンカ(九州・四国と山口県)が自生しています。
チャの原産地は、中国雲南省の照葉樹林と考えられています。
チャ(Camellia sinensis)には、大きく分けて中国種(Camellia sinensis var.sinensis)とアッサム種(Camellia sinensis var.assamica)の2つの変種が知られています。
中国種は、樹高が低く、樹形が根元から多くの幹が出て主幹と側枝の区別が明らかでなく(潅木)、葉が小さい(小葉種)ことが特徴で、主に緑茶用に向きます。
アッサム種は、樹高が高く、樹形が主幹と側枝の区別が明らか(喬木)で、葉が大きい(大葉種)ことが特徴で、主に紅茶用に向きます。日本へ伝わったチャは主に中国種です。
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チャ(学名:Camellia sinensis)
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ヤブツバキ(学名:Camellia japonica)
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サザンカ(学名:Camellia sasanqua)
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アッサム種(左)と中国種(右)のチャの葉
お茶の花・お茶の種子
お茶は、秋から初冬(9月から12月)に花を咲かせます。
白い花弁の中に明るい黄色のおしべがたくさんあり、その中央にめしべが1本あります。
花弁とがくはそれぞれ5枚づつあります。
花は下を向いて咲きます。
茶の花芽は、今年伸びた枝に付きます。
このため、新芽の部分を収穫する茶畑では、畝の上部に花はあまり咲きません。
枝を刈らない畝の側面や下部、新芽の収穫をしない茶の木には、花が多く咲きます。
花のあとは、緑色の実ができます。
大きさは2から2.5センチメートルくらいの大きさです。
熟してくると実の表面は茶色くなってきます。
翌年の、花の咲くころ、お茶の実の表面がはじけて中から1から4個の種子が出てきます。
種子の寿命は短く、時間が経てば経つほど芽が出にくくなります。
取ったらすぐに植木鉢や、畑にまきます。
充分に水をやると芽がでてきます。
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チャの花と実
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チャの実
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チャの種子
お茶の葉
春になると、黄緑色の新芽を出します。
これが新茶になるのです。
つまれなかった葉は、やがて硬くなり、濃い緑色になります。
葉っぱは長い楕円形(だえんけい)で、まわりに鋸歯(きょし)というギザギザがあります。
葉は互生(ごせい)といって茎に互い違いに葉をつけます。
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チャの新芽
植物としてのチャと茶業
日本の茶園は「やぶきた」という品種が7割以上を占めていますが、これはたった1本の木を、さし木で増やしたものです。
さし木ですから、遺伝子100パーセントコピーです。
いわば日本のチャの木の7割以上は1本の木のクローンなのです。
これはこの品種が総合的にすぐれた特性をもつことと、品種が同じだと、一斉に同じような葉っぱの出方をするので機械で摘み取るのには、とても好都合なのです。
種子で育てると、早く芽を出すのもあれば、なかなか出さないのもある。
葉っぱの大きいのもあれば、小さいのもある。
病気や虫、寒さにも、強いもの弱いものがある。
チャにも人間と同じようにそれぞれの個体差があるのです。
個体差があると経済的ではありません。
しかし一つの生物として見たとき、多様性はとても大切な意味を含んでいます。
現在スリランカは、紅茶の生産で有名な国ですが、かつてはブラジルに次ぐコーヒーの大生産地でした。
しかし品種の画一化で、コーヒーさび病の大流行を招き、それに替わってチャの栽培が大きく伸びたのです。
同じように日本のチャも病虫害が発生したときに壊滅的な打撃を受ける危険性があるのです。
これは何もチャだけに限った話ではなく、農業という産業では古くから起こっていることなのです。
また生物の多様性は、遺伝資源の保全という点から、地球全体を視野にした重要な課題になっています。
この認識は徐々に浸透しつつあり、その対策への関心も次第に高まってきています。
【写真解説】
タネから出てきた芽です。
個体差が一目瞭然です。
真ん中にある白っぽい葉っぱは、葉緑素がもともと少ない個体です。
葉っぱの大きさもまちまちです。
お茶の成分と機能
お茶に関しては以下の様なデータが報告されています。
埼玉県立がんセンターの疫学調査では1日10杯以上緑茶を飲む女性が、がんにかかる平均年齢は3杯以下の人に比べて、7.3歳遅れている。
男性では3.2歳と小さいが、非喫煙者だけを比較すると、女性同様に強力な防除効果が得られたとの報告がでている。
静岡県立短期大学の調査によると、静岡県のがん死亡率は全国平均より低い。
なかでも銘茶産地である川根町では胃がんの死亡比が、全国100に対して、男性20.8、女性でも29.2と約5分の1から3分の1程度という低さであるという結果がある。
この地域の人たちが、どのくらいお茶を飲んでいるかといえば、平均して1人1日2リットル、湯のみ茶碗で軽く10杯を超える量である。
東北大学医学部の調査によると、お茶を1日に5杯以上飲む人の、脳卒中の死亡率は、4杯以下の人の、2分の1だったという結果を出している。
【参考・引用】入間市博物館紀要「総合的な学習の時間等での茶に関する質疑応答」八木勇