ALITお茶大学 慈光茶復興プロジェクト始動!
更新日:2025年11月14日
お茶大学研究生コース 慈光茶復興プロジェクトが活動再開!
ALITお茶大学では、経験者を対象とした上級者向けコースとして「研究生コース」を設けており、博物館学芸員とともに調査研究を行っています。
コロナ禍で休止していましたが、今年度より5年ぶりに活動再開します。
今年度は、16名の研究生が当館ボランティア会八木手揉み狭山茶道場の協力のもと、4回にわたって慈光茶の再現実験を行い、慈光茶製造方法の確立に向け、研究を進めます。
慈光茶復興プロジェクトとは ~鎌倉・室町時代の銘茶を再現~
「慈光茶」は全国の銘茶の一つとして中世の文献に登場する武蔵国の茶で、「河越茶」とならぶ埼玉県内最古の茶産地とされます。慈光茶の生産拠点であった埼玉県ときがわ町の「慈光寺」は、鎌倉時代に『喫茶養生記』を著した栄西の弟子・栄朝が住んだ寺で、山内には現在でも多くの茶の木が残されています。入間市博物館では、この貴重な茶の遺伝資源を活用し、栄朝の師・栄西が『喫茶養生記』に記した製茶法で「慈光茶」を復興する取り組みを、平成27年(2015)より続けています。
機械製茶が普及した現代でも、「煎茶」の手揉み製法は伝統技法として伝承されています。しかし、「抹茶」のもととなる「碾茶」の手製法は機械化により廃れてしまい、現代に伝承されていません。しかも、「覆下栽培」が始まる以前の鎌倉・室町時代の抹茶の製法は『喫茶養生記』以外ほとんど史料がなく詳細が不明です。800年前の「慈光茶」とは、どんなお茶だったのでしょう?その復活を目指す取り組みが、入間市博物館の「慈光茶復興プロジェクト」です。
作業報告(随時更新します)
茶臼・薬研・点茶実験(11月8日)
研究生コース4回目は、前回仕上げた碾茶を粉末化し、点てて飲んでみました。私たちが復元のテキストとする『喫茶養生記』には、茶を粉末にする方法が記載されていませんが、栄西が宋で見聞した方法は、「薬研」を用いていたと考えられています。一方、『旅宿問答』で慈光茶が武蔵国の銘茶と記された室町時代には、「茶臼」が普及していました。そこで、薬研と茶臼の両方で比較しました。
日向、半日陰、日陰の3種類の慈光茶を、茶臼と薬研でそれぞれ挽きます。また、比較のため現代の狭山茶の碾茶も茶臼と薬研で挽き、計8種類で比較しました。
8種の碾茶を30gずつ計量して小袋に分け、薬研と茶臼で挽き、それぞれ挽き終わるまでにかかった時間を計測しました。
体力と忍耐を要する作業です。みんなで手分けして作業します。
挽き終わった粉末茶は振るい掛けして、粗い粒は二度挽きしました。完成した粉末茶は、自然光の下で色調を検査しました。
点て方は、『喫茶養生記』のレシピ通り、方寸匙(中国の薬用計量スプーン)で3匙の粉末茶を熱湯で点てました。『喫茶養生記』には、点てる際の湯量について記載がありませんが、栄西が留学した宋代の中国では、大きな器で建盞5碗分くらいをまとめて点て、汲み分けたと考えられています。私たちは、500mlの湯量で点ててみました。
点てた茶を小さな茶碗に移してテイスティングしました。日向、半日陰、日陰の慈光茶と、現代の狭山茶抹茶を、茶臼と薬研それぞれで挽いた8種の茶で、水色や沈澱物、風味やのど越しの違いなどを比較しました。
今回の実験で、また新たな疑問や課題も生じました。この研究は、来年度も継続し、研究成果は来年度発行の『紀要』で論文発表する予定です。
碾茶作り(11月1日午後)
研究生コース3回目は、碾茶作りに取り組みました。
乾燥させた茶葉(荒茶)を篩(ふるい)でしごいて粉砕し、茎や葉脈、粉を取り除きます。
残った葉肉の部分だけを焙炉で再乾燥して、碾茶に仕上げていきます。
目の粗い篩に茶葉をのせて、しごいていきます。
粉砕作業の次は選別作業です。箸を使って茎や葉脈を取り除いていきます。
茎や葉脈などを取り除いたら、目の細かい篩を使って粉をより分けます。
選別作業の後、仕上げ乾燥のため火入れを約30分間行いました。
仕上げ乾燥を終えたら碾茶の完成です。
次回はこの碾茶を薬研や茶臼で抹茶にして、実際に試飲します。
現代の抹茶との違いや慈光茶の風味の特徴を調べます。
いったいどのようなお茶に仕上がるのでしょうか。
荒茶作り(11月1日・午前)
5月17日に実施した蒸し葉の乾燥作業が時間内に全て終わらなかったため、冷凍保存しておいた蒸し葉の乾燥作業をおこないました。
本日の乾燥方法は、研究生が提案した新たな方法で実験しました。
はじめに、和紙の上に蒸し葉を広げてならべていきます。
焙炉の助炭面(和紙の部分)を外し、トタンをむき出しにした状態で、和紙の上に蒸し葉をのせた竹ざるを並べていきます。
並べ終えたら紙で覆いをして、熱を逃がさないようにして乾燥させていきます。
乾燥させる際、摘んだ場所、乾燥開始・終了時刻、乾燥前、乾燥後の重さを記載し、乾燥時間や重量の変化を記録しました。
乾燥が終了した荒茶(左から半日蔭、日陰、日向で摘んだ茶葉)
茶摘みと製茶作業(5月17日)
研究生コース2回目は、いよいよ慈光寺での茶摘みです。栄西は、「雨の日は茶摘みや製茶をしない」と書いていますが、当日はあいにくの雨模様でした。当時のお茶は「抹茶」です。しかし、現代のような「覆下栽培」はまだなく、露地栽培の茶を使用していました。茶の生育環境の違いによりどのような風味の違いが生じるかを検証するため、日陰(常緑樹林下)・半日陰(落葉樹林下)・日向の茶を摘みます。(慈光寺の許可を得て茶摘みをしています)
栄西は「朝に茶摘みをし、すぐに蒸して、すぐに焙る」と書いています。博物館に戻って、すぐに製茶作業に取り掛かります。
雨に濡れた茶葉をキッチンペーパーで丁寧に拭き取り、蒸籠で蒸します。
蒸した葉を乾燥させます。栄西は「焙り棚に紙を敷き、紙が焦げないように火で焙る」と書いています。私たちは、これを現代に再現するため3つの方法で実験しました。温度や時間、重量などを計測し、それぞれの長所や短所を検証しました。
(1)焙炉(ガス)+助炭 (2)七輪(炭火)+和紙 (3)ホットプレート+クッキングシート
乾燥した茶葉(荒茶)は、次回の活動日まで冷凍保存します。
次回(11月1日)は、この荒茶を粉砕・選別して「碾茶(抹茶のもと)」を作る実験を予定しています。
ガイダンス開催(4月29日)
研究生コース1回目は、博物館でガイダンスを行いました。復興プロジェクトを進めるにあたり、これまでの研究生コースのあゆみや慈光茶についての説明を受け、今までの研究生コースで出た課題について意見交換を行いました。
関連リンク
- 幻の銘茶「慈光茶」再現実験(外部サイトにリンクします)
- ALITお茶大学
