西洋館は、石川組製糸の創業者石川幾太郎により、大正10年(1921)に迎賓館として上棟された洋風建造物です。映画やドラマ、CMの撮影にもよく使われています。
建物外観は、煉瓦調のタイル貼りの外壁と、窓を設けた変化のある屋根に特色があります。館内は、戦後進駐軍に接収され改造を受けた箇所もありますが、全体的に当時の様子を良くとどめています。部屋ごとに特色のある天井や床の造形、照明器具をはじめ、玄関ホールの大理石製の暖炉、一木で作られた階段の手すり、特注の調度品などは、最高級の材と職人の技術を惜しみなく使って作られており、建物としても非常に見ごたえがあります。幾太郎が取引先のアメリカの貿易商を招くに当り、「豊岡をみくびられてはたまらない。超一流の館を造って迎えよう!」と決意したという、その心意気がうかがえるようです。当時の入間市域の繊維業と石川組製糸の繁栄を知ることができるとても貴重な歴史的遺産です。
西洋館は平成13年に本館、別館ともに国の登録文化財となり、平成15年には入間市が建物の寄付を受け、敷地を購入し、永く保存を図ることになりました。市教育委員会では、平成29年度に本館屋根の改修や別館の廊下復元、トイレの設置といった整備を行いました。今後は、建物の公開をはじめ、西洋館ならではの雰囲気を活かした事業を行い、より多くの皆様に西洋館の魅力を知っていただこうと考えています。将来にわたって西洋館を大切に守り、地域の歴史や建築への関心を深めていただければ幸いです。
参考文献
入間市博物館アリットや市役所でお買い求めいただけます。在庫切れの場合もありますのでお問合せ下さい。
- 入間市博物館紀要第9号
- 特別展図録 石川組製糸ものがたり